›February 27, 2011
雪崩についてメディア等でよく言われることへの違和感
「気温が高い日が続いているから雪崩に気をつけて」
春先になると良く言われているのが、「気温が高い日が続いているから雪崩に気をつけて」これ、結構違和感あるんです。いえ、内容は正しいですよ。でも・・。
違和感の理由・・
(1)気温が高いだけでは判断できない(アバランチハザードトライアングル参照)
(2)全層雪崩に注意ってことなわけですが、そもそも全層雪崩って事故率低い(表層の注意喚起はそれ以上にされているのか?)
※かといって、全層雪崩にも気をつける必要があるのは正しいですよ、誤解なきよう
(1)は、そのままですね。
(2)ですが、
・そもそも雪崩の全層雪崩の割合はわずか2%にすぎない(最新雪崩学入門より)
・全層は斜面等に予兆があり、避けやすい。
・全層は雪崩スピードが遅いので、発見が早ければかわせる可能性ある
・全層は、人的な要因が発生原因になることよりも自然発生が多い=巻き込まれる確率が表層よりはるかに低い
リスクの低いほうばかりを指摘して、リスクの高いほうはスルーってのがどうも違和感なんだよね。大雪のあとのピーカンのときに雪崩注意っていう報道あまり聞かないから。
たぶんそれは後述する、雪崩注意報にからんだものだと思います。
<つまり・・>
春先になると良く言わる、「気温が高い日が続いているから雪崩に気をつけて」への違和感は、気温だけでは判断できないことと、(相対的に)リスクの低いものに対する過剰な注意喚起から来るものなのかな。
もちろん注意するのは大事です。春先の全層雪崩も注意していくべきものです。
ただし、正しい認識で、と思います。
「雪崩注意報が出ているのに…」
もう1点違和感、たまに言われる「雪崩注意報が出ているのに・・・」。たぶん前述の暖かい日が続いたときに雪崩への注意を呼びかける報道が多いのもこの雪崩注意報によるものが大きいのかなと思ってます(理由は後述)雪崩注意報がどういう基準で出るか知ってて言っていますか?
地域によって違うのですが、新潟での雪崩注意報は・・
1.降雪の深さ50cm以上で気温の変化が大きい場合
2.積雪が50cm以上で最高気温が8℃以上になるか、日降水量20mm以上の降雨がある場合
http://www2.ceri.go.jp/snow/nadare/04.html
さすが気象庁。基本的に降り積もった雪の状態は関係ありません(笑)気象条件のみです。
気象条件はアバランチハザードトライアングルの積雪条件の中のさらに一部分の要素でしかなく、従って雪崩注意報だけで判断はできません。
特に積雪50cm以上で最高気温が8度以上って、春先は毎日起こりえます。これを参考にしろってほうがおかしいでしょ。
フランス・スイス・カナダなどでは公的機関から雪崩に関する重要な情報が発信されていますが、日本は残念ながら・・な状況です。
<まとめ>
雪崩注意報はバックカントリーをするものにとっては全くあてにならない情報。
春先に「雪崩に注意して」の報道が多くなるのは、雪崩注意報をもとにしてのものだと思われる。
春先に毎日のように出る雪崩注意報、これを元にしてメディア等では「雪崩に気をつけて」の報道がされ、暖かくなると雪崩注意のイメージができあがる・・。
ちょっと違うなあと思う違和感はこのへんです。
最後に
雪崩は怖いものですが、正しい知識をもってリスクを少しでも減らしたいものです。怖いのは無知や間違った認識による行動。正しく学んで楽しいバックカントリーを。
(私ももっと勉強しなきゃ!)